レール変遷
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れーるへんせん
Changes of a rail
産業革命前の 16 世紀後半から 17 世紀初めにイギリスまたはドイツにて、重量物を運搬する手段として発達した車両を円滑に抵抗を出来るだけ小さく抑えて走行する目的で鉄板張り付けレールが考案された。それまでは、現在のような鋼を使用しておらず木材をつなぎ合わせたものであった。
詳しいレール変遷は以下の通りである。
西 暦 | 年 号 | で き ご と |
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1604 | 慶長9年 | イングランドのノッチンガム地方で、炭鉱から近くの川までの約3㎞の区間をトロッコが走行できるように木製レールを使用して軌道が敷設された。 |
1767 | 明和4年 | イギリスにて、今まで使用してきた木製の縦角材では、レールの損耗が激しいので、それを改善するために、縦角材の上に鋳鉄製の板を敷いた鋳鉄製の鉄板張り付けレールを考案。1本のレールの長さは、1,524mmである。 |
1776 | 安永4年 | イギリスにて、レールの長さが、914mmの鋳鉄製のL形レールを発明。 |
1784 | 天明3年 | イギリスのコートがパドル炉を用いた錬鉄製造法(パドル法)を発明。蒸気機関による圧延機やコークス高炉技術の開発にともなって、近代的なレールの製造方法が可能になる。 |
1789 | 天明8年 | イギリスのジェイソップによって鋳鉄魚腹形レールを発明。 |
1797 | 寛政9年 | イギリスにて、鋳鉄エッジレールが発明される。 |
1802 | 享和2年 | イギリスにて、レールの長さが、1,372mmの鋳鉄レールが発明される。 |
1808 | 文化5年 | イギリスにて、レールの断面が逆T形をした鋳鉄レールが発明される。 |
1808 | 文化5年 | イギリスにて、板状の可鍛鋳鉄板レールが発明される。 |
1816 | 文化13年 | イギリスにて、西暦1825年9月25日に開業した、世界で最初の公共用のストックトン・アンド・ダーリントン鉄道で、ロッシュ、スディーブンスンが発明した鋳鉄魚腹レールを使用。 |
1816 | 文化13年 | イギリスにて、西暦1797年に続き新しい鋳鉄エッジレールが発明される。 |
1820 | 文政3年 | イギリスのバーケンショウが錬鉄からの圧延された、レール錬鉄圧延レールを製造。1本の長さが13フィート(3.962m)から15フィート(4.572m)へ伸びた。形状は丸い幅広の頭部と厚い腹部から構成されており継目部はチェアと呼ばれていた鋳鉄製の支持台で支える構造である。1メートル当たりのレール重量は、12.9kgである。 |
1830 | 文政13年 | イギリスのクラレンスの錬鉄圧延レールが発明される。1メートル当たりのレール重量は、16.4kgである。 |
1831 | 文政13年 | アメリカのスティーブンスが平底レールを設計する。レールの長さは6ヤード(5.486m)で、レールの重量が、1ヤード(0.9144m)当たり36ポンド(16.329kg)である。メートル換算で、1メートル当たり17.9kgである。断面形状がI形よりT形に似ていたため「Tレール」と呼ばれていた。 |
1831 | 文政13年 | アメリカのペンシルバニア鉄道で平底レールが使用される。メートル換算で、1メートル当たりの重量は、20.3kgである。 |
1835 | 天保6年 | アメリカで、レールの断面が逆U形の断面形状をしたU形レールが発明される。1メートル当たりの重量は19.8kgである。 |
1836 | 天保7年 | フランスのビニョルで平底レールが発明される。1メートル当たりの重量は17.2kgである。 |
1837 | 天保8年 | イギリスのロックが頭部と底部の断面形状を同じにして、レール交換のときにレールの上下を反転させて使用するロックレール(双頭レール)を考案。1メートル当たり28.8kgである。しかし、レールを支えるチェアにおいて、レールとチェア部との接触部が損傷した。日本においても最初に導入されたレールも双頭レールである。 |
1844 | 天保15年 | エバンスのU形レールが発明される。1メートル当たりの重量は、19.8kgである。 |
1844 | 天保15年 | イギリスで、比較的圧延が容易で、冷却が一様でまっすぐなレールが得られやすい牛頭レールが考案される。しかし、レールの横方向の安定性に問題があり、イギリス以外ではほとんど使用されなかったが、イギリスでは標準化され使用された。 |
1845 | 弘化2年 | アメリカでピアヘッドレールが発明される。1メートル当たりの重量は、28.8kgである。 |
1856 | 安政3年 | 西暦1855年に、イギリスのベッセマーが発明した酸性空気底吹転炉製鋼法で、レールに適用した鋼圧延レールが製造される。 |
1858 | 安政5年 | アメリカでレールの中が空洞になった中空レールが発明される。 |
1858 | 安政5年 | アメリカのペンシルバニア鉄道で標準レールが発明される。1メートル当たりの重量は、21.2kgである。 |
1864 | 元治元年 | アメリカで最初のベッセマー鋼レールが発明される。1メートル当たりの重量は、24.8kgである。 |
1872 | 明治5年 | 日本において、初めて鉄道が創業する。10月14日に、新橋-横浜駅間28.97kmが開業する。当時のレールは、60ポンド(29.8kg)の重量で24フィート(7.315m)の長さの双頭レール、平底レール、U形レールが輸入されて敷設された。 |
1878 | 明治11年 | イギリスのトーマンが塩基性空気底吹転炉を発明した。これは、リン・イオウなどが多い良質な鋼が製造できた。 |
1883 | 明治16年 | 日本において、東海道線に30kg第1種レールで、長さが30フィート(9.144m)、重さ61.5ポンド(30.5kg)のレールが輸入されて敷設された。30kg第1種レールは、平底レールで、これ以来日本においては、平底レールが使用されるようになった。 |
1885 | 明治18年 | ドイツでハルマンレールが発明される。1メートル当たりの重量は、31.6kgである。 |
不明 | 不明 | ドイツで溝付きフェニックスレールが発明される。1メートル当たりの重量は、66.8kgである。 |
不明 | 不明 | ドイツでHT形ハーキュレスレールが発明される。1メートル当たりの重量は、54.7kgである。 |
1898 | 明治31年 | 日本において 30kg第2種レールで、長さが30フィート(9.144m)のレールが制定される。 |
1900 | 明治33年 | 逓信省令鉄道建設規程の公布。 |
1901 | 明治34年 | 官営八幡製鉄所創立、酸性転炉製鋼にて30kg第2種レールの直送圧延の開始。 |
1905 | 明治38年 | 37kgレールの33フィート(10.058m)の製造を開始。 |
1906 | 明治39年 | 日本において列車速度の向上や輸送量の増大化などにより軌道破壊を抑えるためにレールの重量化が検討され、ASCEのレール長33フィート(10.058m)、重量が75ポンド(37kg)のレールが導入された。
30kg第3種レール、9.144m長のレールが制定される。 |
1922 | 大正11年 | 日本においてレール長が、33フィート(10.058m)で、重量が100ポンド(50kg)のPSレールが敷設された。
50kgレール第1種甲軌条の輸入および敷設。塩基性平炉鋼によるレールの製造を開始する。 |
1923 | 大正12年 | 日本の八幡製鉄所で初めてのレールが製造された。レール長11.887mの50kgレール(100lbRA-A型)である。
50kg第2種レール(RE型)、10.058m長のレールを輸入および敷設。50kgRA-A型レール、11.887m長のレールを製造開始。 |
1925 | 大正14年 | 日本の八幡製鉄所で初めてのレールが製造された。レール長11.887mの50kgレール(100lbRA-A型)である。 |
1927 | 昭和2年 | 酸性転炉鋼レールの製造を中止する。 |
1928 | 昭和3年 | 50kgレール(50kgPS型レール)の製造を開始。これ以降、国産にてレールをまかなう。 |
1929 | 昭和4年 | 日本で軌条に関する仕様書が制定された。これを契機に日本で使用されるレールはすべて国産で製造されるようになった。その規格では、50kgレールが12m 、30kg第3種レール(ASCE形レール)・37kgレール(ASCE形レール)が10.058mと規定された。
建設規程の公布、軌条仕様書の制定。 |
1931 | 昭和6年 | 37kgレールの24m長レールが製造され敷設される。 |
1932 | 昭和7年 | 37kgレールの25m長レール、50kgレールの24m長レール、30kg第3種レールの20m長レールの製造が開始される。 |
1933 | 昭和8年 | 日本でのレールの規格が見直され、軌道保守量とレール重量の関係・車両運動・車両振動とレール長の関係、さらに、レールの座屈、継目遊間の管理など検討して、レールの標準長は50kgレール・37kgレールは25m 、30kgレールは20mと定められた。 |
1949 | 昭和24年 | イギリスで牛頭レールに変わって平底レールが導入される。
レールのJES制定。 |
1949 | 昭和24年 | オーストリアにて平炉より生産効率や品質も向上した純酸素上吹転炉製鋼法が発明される。 |
1951 | 昭和26年 | レールのJRS制定、熱処理レールのJRS制定および試作。 |
1952 | 昭和27年 | 富士製鉄、釜石製鉄所がレールの製造を開始する(8トン鋼塊、ブルーム冷却方法)。 |
1953 | 昭和28年 | 普通レールのJIS制定。 |
1954 | 昭和29年 | 熱処理レールの量産を開始する。 |
1956 | 昭和31年 | 圧延前のホットスカーフィング作業を開始する。 |
1961 | 昭和36年 | 日本で新幹線計画の具体化とともに、今まで使用されてきたレールの問題点を整理して、レール断面形状の改良が行われて、在来線の狭軌線用で、40kgNレール・50kgNレールが、また、新幹線用として50kgTレールが設計され制定された。 |
1962 | 昭和37年 | 50SレールのJRS制定。40kgNレール、50kgNレール、50kgTレールの量産を開始する。 |
1963 | 昭和38年 | 熱処理レールのJRS制定。中継レールのJRS制定。 |
1964 | 昭和39年 | 東海道新幹線が開業(50kgTレールのロングレール)。端頭部熱処理レールのJRS制定。 |
1966 | 昭和41年 | LD鋼レールの製造を開始する。 |
1967 | 昭和42年 | 日本で山陽新幹線の計画のときに、東海道新幹線の輸送状況から将来の輸送の伸びなどを検討した結果、60kgレールが設計され制定された。
60kgレール、25m長のレールの製造を開始する。 |
1968 | 昭和43年 | 60kgレールの量産を開始する。国鉄のレール受け入れ検査方式が、品質管理要求付きに変更(鉄道機器製作監督事務所を廃止して、資材局品質管理部を設立) |
1969 | 昭和44年 | 全面的に塩基性平炉鋼からLD鋼へ移行する。 |
1970 | 昭和45年 | 90SレールのJRS制定。八幡製鉄と富士製鉄が合併して新日本製鉄を設立する。
日本鋼管が釜石製鉄所のレール工場を引き継いでレールの製造を開始する。 |
1971 | 昭和46年 | 八幡製鉄所の新レール工場が完成する。ユニバーサル圧延操業の開始。レールの直送圧延を中止して、8トン鋼塊、ブルーム冷却方式を実施する。 |
1972 | 昭和47年 | 山陽新幹線の新大阪‐岡山間の開業(60kgレールロングレール)日本鋼管福山製鉄所第2大型工場でレールの圧延を開始する。
釜石製鉄所のレール製造を中止する。福山および八幡製鉄所西八幡レール工場で60kgレールの50mレールの製造を開始する。 |
1973 | 昭和48年 | 福山製鉄所で13トン鋼塊レール圧延の開始。 |
1974 | 昭和49年 | 福山製鉄所で16トン鋼塊レールの圧延を開始。 |
1975 | 昭和50年 | 山陽新幹線の岡山‐博多間の開業。 |
1977 | 昭和53年 | 新幹線用耐シェリング鋼レール4種類を製造し敷設した。 |
19世紀中ごろまでアメリカでU形レールあるいはT形の頭部を大きくしたレールが考案されたが、最終的には、レール頭部の摩耗やマクラギの締結性能などを考慮して、現在は、ほとんどの主要なレールの大部分はI形をした平底レールの断面形状である。