木まくらぎ防腐処理
提供: 保線ウィキ
きまくらぎぼうふしょり
tie antisepsis processing
木まくらぎ防腐処理とは、木まくらぎの製造過程で、木まくらぎにクレオソート油を注入して耐用年数を向上させる。
木まくらぎの腐朽
木まくらぎの交換基準で、最も交換原因が多いのは腐朽である。
木材の腐朽は、木材腐朽菌が木材の中に進入して、その成分を栄養源として消化する。そして、木材組織を破壊することによって発生する。
これらの腐朽を防止するためには、木材腐朽菌の進入を防止するか、侵入しても繁殖ができないようにすれば良い。
木材の防腐対策として、一般に薬剤による殺菌や、菌の発育に不適な環境を与えることが行われている。木まくらぎの場合、敷設環境が木材腐朽菌の活動を活発にさせているので、薬剤による殺菌を行っている。
防腐薬剤の種類
現状では、
- クレオソート油 (環境配慮型クレオソート油)
- アルキルアンモニウム化合物
- 銅・アルキルアンモニウム化合物
- クロム・銅・ヒ素化合物
- ナフテン酸銅
- ナフテン酸亜鉛
などがあるが、鉄道で使用されている木まくらぎの防腐には、一般的にクレオソート油が使用されている。
しかし、近年では環境に配慮した薬剤を使用する鉄道事業者もいる。
防腐処理方法
防腐剤を木まくらぎに塗布する方法は、
- 刷毛などによって防腐剤をまくらぎ表面に塗布する。
- 防腐剤をまくらぎ表面に散布する。
- 防腐剤をまくらぎ表面に浸漬させる。
- 防腐剤をまくらぎに加圧注入させる。
などの方法があるのだが、現在では、防腐剤を加圧注入させる方法によって防腐処理が行われている。
防腐剤は加圧注入方法により処理され、現在はおもに3種類の方法で行われてる。
防腐処理の手順
- 木まくらぎにクレオソート油を加圧注入する方法は、おおむね次のような手順で行われる。
- 樹木の伐採
- 国内外とも山林から樹木を伐採してくる。
- 製材工場にてまくらぎに加工
- 伐採された木材を製材所にて所定の大きさに切り出す。
- 予備防腐処理の施工
- 防腐処理の前に木材の健全性が失われないようにするために施工される。
- 伐採および製材直後に施される処理で、ヒバ・ヒノキ・米ヒバを除く全樹種に対して行われる。
- 予備防腐は一般的にクレオソート乳剤を、外材の場合はペンタクロルフェノールナトリウムを用いることが多い。
- インサイジング加工
- 割れ止め加工
- まくらぎの端部側面に鋼製リングを打ち込みまくらぎの割れ止め加工を施す。
- 表示クギの打ち込み
- 品質保証つきのまくらぎは、製造元を区別させるためにまくらぎの表面に表示クギを打ち明確にさせる。
- 天日乾燥
- 製材工場または外国から運搬された木まくらぎは、素材検査を受けて、木まくらぎ等級別・樹種別に分類される。そして、井桁積・交互積・サン積のいずれかの方法により自然乾燥させる。
- 木まくらぎの乾燥度は、この後に施工する防腐剤の注入処理の注入量に大きく影響する。したがって、乾燥が不十分な木まくらぎは、ブルトン法などの強制脱水処理を併用した防腐処理方法を採用することとなっている。
- 防腐剤の注入
- 防腐剤を加圧注入方法により木まくらぎに浸透させる。
- コーティング処理
- 最終検査
- 木まくらぎの防腐品質は、防腐剤の注入量・浸透長・濃度などに左右される。したがって、樹種により製品検査対象樹種と雑(ザツ)の2種類に区分される。
- 製品検査対象樹種は、加圧式クレオソート油防腐処理マクラギ(JIS A 9104)を適用され、次の表以上の品質なければならない。
- 雑(ザツ)については、木材の加圧式防腐処理方法(JIS A 9002)を適用され、防腐の注入量はロッド平均で160kg/m3以上と規定されている。ただし、カプールについては50kg/m3以上を確保することが条件である。
- 樹木の伐採
製品検査対象樹種
樹種 | 浸透長 | 濃度 | 注入量 |
---|---|---|---|
ブナ | 30mm以上 | 標準液以上 | 170kg/m3以上 |
ニレ | 30mm以上 | 標準液以上 | 170kg/m3以上 |
ナラ | 20mm以上 | 標準液以上 | 170kg/m3以上 |
ケンパス | 30mm以上 | 標準液以上 | 170kg/m3以上 |
クルーイン(アピトン含む) | 30mm以上 | 標準液以上 | 170kg/m3以上 |
- ケンパスの浸透長の測定に当たっては、材内の節部分は浸透したものとみなす。
- 注入量は、前重と後重の重量差を素材体積で割って求める。
- 濃度は、試験片のクレオソート油の浸透部分を頂点から30mm切り取り、キシレンを30cc入れた試験管に入れる。そして、100度の温度で30分間加熱抽出する。抽出された液の色を標準液と比較して測定する。
- 標準液とは、検査されるマクラギの防腐処理に使用した作業油を0.2g(±0.005g)採取して、キシレンを加えて100g(0.1g)としたものを標準液とする。