木材腐朽菌

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もくざいふきゅうきん
Wood rotting fungus
木材腐朽菌で腐朽した並まくらぎ。ここまで腐朽すると本来の性能が果たされなくなり、保安上、危険度が増すためまくらぎを交換する。

木材腐朽菌とは、木まくらぎなどを分解する、または、腐朽させてしまう菌で、現在、判っているだけでも数百種類あります。それらを総称して木材腐朽菌と呼ばれています。

これらの多くはキノコの仲間であり、枯木や生木に寄生してその養分を吸収し木材を腐らせて成長していきます。身近なものでは、シイタケやマイタケなども木材腐朽菌の一種です。

木材腐朽菌の種類

木材腐朽菌は大きく分けて2種類に分けられます。

木材の主成分は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンの3種類で、セルロースとヘミセルロースを分解し褐色に変化させるものを褐色腐朽菌、リグニンまで分解し白色に変色させるものを白色腐朽菌といいます。

特に木材の細胞を強固につなげる接着剤の役割を果たすリグニンは非常に複雑な構造をもっており、簡単に分解できるものではありません。

そんなリグニンをも分解してしまう白色腐朽菌の能力は、さまざまな分野で役立っています。紙・パルプ産業に応用され、塩素系の漂白剤を使用しない環境に優しいパルプ製造に一役かったり、さらには、この性質を応用して、毒性のある環境ホルモンやダイオキシンなどの環境汚染物質を無毒化(バイオレメディエーション)するという応用研究も進んでいます。

木材腐朽菌が活性化する条件

木材腐朽菌は他の生物と同様、繁殖するには適度な水分を必要とします。

木材の含水率が繊維飽和点以下で、自由水がないような場合には菌は繁殖せず、逆に水分が多すぎても増殖しません。それは、腐朽菌が好気性で酸素を必要としているためです。

貯木場で水に浸かっている木が腐らなかったり、数百年もの間、土中に埋まっていた木材が、少しも腐朽菌の被害を受けていないことが珍しくなかったりするのも、酸素の供給が遮断されているためです。

これを利用したのが、イタリアの水の都ヴェネチア。もともと海の浅瀬でほとんど水没している湿地帯であった場所に膨大な数のカラマツの杭を打ち込み、その上に石の板を置いてつくられた人工的に造られた町です。“水の中には空気がないため、腐らない”、1000年の歴史をもつヴェネチアには木材をうまく利用した先人たちの知恵が隠されています。

木材腐朽菌が好む条件

  • 温度:3~45℃。特に30℃前後が適している。
  • 水分:大気中の湿度が85%以上。木材中の水分(木材含水率)が25%~150%。
  • 酸素:空気がなければ生息できない。
  • 栄養:木材の主成分であるセルロース・ヘミセルロース・リグニンなどこれらひとつでも欠ければ木材腐朽菌は活性化できない。

これらの条件が整いやすい線路では、木材腐朽菌が繁殖しやすい環境といえます。

したがって、クレオソート油などで木まくらぎ防腐処理を施すことにより、木まくらぎの寿命を少しでも延命させることをしています。