空転傷

提供: 保線ウィキ
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くうてんきず
wheel burn , engine burn
木まくらぎ区間で発生した空転傷。列車の力行により車輪が空転してレールに熱が加わりこのような傷となる。
空転傷の詳細。比較的浅い傷については、このままレールを使用しても問題ないが深く入った傷については横裂にいたる。
空転傷のなかでも貨物列車をけん引する電気機関車など大型で重量がある車両が一度空転してしまうとレールに及ぶ影響が大きい。

空転傷とは、レールの車輪踏面において、列車または車両の駆動車輪がスリップすることによってできた傷を空転傷と呼んでいる。また、制動時に車輪がスリップすることによりできた傷を滑走傷(かっそうきず)と呼んでいる。

空転傷の特徴

左右レールの同じ位置のレール頭頂部に表層剥離欠損がみられ、そこの部分にへこみ傷が見られる。

この空転傷を起点に、横裂にいたるものを空転横裂(くうてんおうれつ)と呼んでいる。

損傷の発生・発達の原因

駆動力行時の空転に際しては、レール頭頂面に空転傷を発生させ、また、制動時の滑走の場合には、レール頭頂面に滑走傷を発生させるほか、列車の車輪踏面にもフラット傷を形成させてしまう。

空転傷あるいは滑走傷により、表層部がマルテンサイト化(焼入れ組織で非常に硬くもろい)してしまい、その下層部には著しい引張残留応力が発生して破壊の要因になる。

主な発生区間

空転傷

  • 駅構内の列車発進位置
  • 信号機の手前とか上り勾配区間

滑走傷

トンネル内の下り勾配区間に多い。また、漏水などによるレール頭頂面上に水が存在している場合、摩擦係数を低下させ滑走を助長させてしまうと考えられている。

防止方法

レールおよび車輪の潤滑は車輪フランジの直立摩耗防止とか、曲線外軌レールのゲージコーナー摩耗防止の手段として実施されているが、レール塗油器による塗油、潤滑は適量を超えるとレール頭頂面にも及び粘着を阻害するので注意が必要である。

油のほかにも結氷水、虫、落ち葉などの頭頂面上に付着、堆積もありレール頭頂面上の付着、堆積物の除去が必要である。

空転、滑走傷は、たとえ損傷程度が小さいものでも表層がマルテンサイト化しており、そのまま継続使用すると、はく離欠損にとどまらず横裂にも及びます。

深さが比較的浅い場合は、マルテンサイト部分を研削除去により継続使用も可能となる。