スラック

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すらっく
gauge widening , excess width of track gauge , slack , wideing of gage
標準ゲージを使用して軌間を測定。規定の1,067mmであれば標準ゲージの目盛りは0mmを指す。

スラックとは、車両が曲線を安全・円滑に通過するために、内軌レールを正規の軌間より拡大することである。車両の構造上の固定軸距を有しているため、曲線部では自由に方向を変えることが困難であることから広げられている。

スラックの特徴

車両が曲線中を安全で円滑に通過するためには、それぞれの車軸が曲線の中心に向いていることが望ましい。しかし、実際には、ひとつの台車に2本・3本の車軸が固定されているため、各車軸が中心に向かうことはあり得ない。したがって、車輪はレールとある角度をもって接触しながら曲線を通過している。

曲線通過時の問題点

列車が曲線を通過するときに発生する主な問題点は、列車の車軸の間隔が大きいほどレールに当たる角度は大きくなり、その結果、レールをきしみながら走行することになる。その結果、次の問題が発生する。

  • 車両の横圧が増大してしまう
  • 軌間の変位・通りの変位が助長されてしまう
  • レール摩耗量が増大してしまう

以上の問題点を緩和するために、曲線半径・車軸間隔(固定軸距)・フランジ内面間距離に相関してスラックを設定している。曲線部を走行する外軌レールに、車輪がある角度を持って接触しながら走行していることを考慮して、内軌レールを内方に少し拡大してスラックを設定している。

スラックの上限値

通常、スラックの上限値は、可動余裕値(7mm)を考慮して計算される。

在来線の場合で、正規の軌間が1,067mmの時で13mm。最小軌間が1,063mmの時でも9mmである。したがって、JR各社では可動余裕値を7mmとしている。

例えば、曲線半径が200mの線形において固定軸距(2軸)が2.3mの場合は6mm。固定軸距(3軸)が4.3mの場合は19mmになる。

スラックの最大値

スラックを設定すると、軌間の拡大に対する保守の余裕が減ることになるため、スラックの上限値で得られる値とは別に最大値を定める必要がある。

旧国鉄において、曲線半径が170m以下で、昭和18年4月に最大30mmのスラックが制定された。

その後、昭和47年3月以降の最大値は、25mmとなり、昭和62年2月には、最大値が20mmとなった。これは、当時の国鉄において固定軸距が4.6mと長い大型蒸気機関車を所有していたためであり、その大型の蒸気機関車(固定軸距が長い車両)が順次廃車されていったのと、ダイヤ改正のたびに、曲線部における速度向上や使用車両の変更などがおこなわれたため、スラックの量が順次縮小されていった。

スラックの下限値

スラックの下限値は、スラックをあまり大きく設定すると、摩耗レールが進行した場合に軌間拡大による脱線事故の恐れがある反面、スラックを0mmとしてもレールと車輪の間の可動余裕値により曲線を通過できてしまう。

例えば、曲線半径が200mの線形において固定軸距(2軸)が2.5mの場合は-4.5mmとなる。したがって、2軸車の場合のスラックの下限値は、マイナスとなることから、実務上は考慮する必要がない。

スラックの改正

平成14年3月に、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」が施行され、省令の標準的な解釈基準が通達として出されました。その解釈基準では、スラックはスラックの上限値以下とすることが定められている。