きしみ割れ

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きしみわれ
head checks , gauge corner head checks , repeated wheel burm
50kgPSレール区間で、比較的曲線半径がゆるい外軌レールに発生したきしみ割れ。列車の進行方向は手前から奥へ走行している。
60kgレール区間に発生したきしみ割れ。列車の進行方向は手前から奥へ走行している。

きしみ割れとは、 レールのゲージコーナー部分に疲労被害が蓄積して、表層部の金属が反列車方向に塑性流動する。その塑性変形が限界に達して規則的なうろこのようなひび割れ状の微細な亀裂に発展すること。

きしみ割れの特徴

ゲージコーナーシェリングと同じく、レールと車輪との転がり接触疲労によって発生する。列車が曲線部を通過するとき、レールのゲージコーナー部分は、車輪のフランジ部分と接触して大きなすべり現象が発生する。また、レールのゲージコーナーの部分には、直線区間と比較すると非常に大きな横圧を車輪から受ける。

これらの、すべりによって発生する力と、横圧を加えた力が繰り返し加わることによりゲージコーナー部分に疲労被害が蓄積される。そして、ゲージコーナー表層部の金属が反列車方向に塑性流動(メタルフロー)が発生して、その塑性変形が限界に達して規則的なひび割れ状の微細な亀裂が発生する。

これが、レール損傷のひとつであるきしみ割れである。

きしみ割れの歴史

昭和27年から昭和33年ごろ、東海道本線や山陽本線などで多発した頭頂面シェリングは、このきしみ割れの亀裂から進展したものだと考えられていた。そして、頭部横裂まで進行して保安上の低下を招いた事例も認められていた。

その要因となったのは、当時、蒸気機関車が散水しながら運転していたため、曲線のゲージコーナー部分がこの散水によって摩耗を抑制された。摩耗が抑制された代わりにゲージコーナー部分が接触疲労によってきしみ割れ状態となり、亀裂の成長を促進させたものだと考えられている。

きしみ割れの原因

きしみ割れは一様に列車進行方向に形成される。しかし、急曲線ではゲージコーナーの応力が非常に大きいため、疲労被害が蓄積する以上に側摩耗が進むため、きしみ割れのような疲労亀裂は発生しない。したがって、きしみ割れは、あまり側摩耗が進まない曲線区間や緩和曲線区間の外軌レールのゲージコーナー部分、直線区間のゲージコーナーで列車が蛇行動するところなどに発生することがある。

したがって、頭部全断面熱処理レールのように、レールを高強度化してもレール強度に応じた応力状態の箇所で発生することが考えられる。であるから、急曲線外軌の側面の摩耗防止のため、レール塗油がきしみわれを発生させる場合があるので、過剰なレール塗油には注意が必要です。

きしみ割れの進行

きしみ割れは、レールを敷設した直後に発生することもあるが、その後、初期状態を維持してきしみ割れが進行することも無く、運転保安上問題が発生することも無い。しかし、きしみ割れが成長するとともに亀裂の先端で「刃こぼれ」状の微小なはく離が生じ、やがて、振動や騒音が大きくなり環境問題に発展する。また、車両にも悪影響がある。

通常、一定の深さで亀裂の進行が停止するためほとんど問題視されない。また、きしみ割れから横裂に進行するケースは、大きな外力や漏水などの特殊な条件が付加されないと起こらない。

きしみ割れの判定基準

頭頂面傷のひとつであるきしみ割れの判定は、旧国鉄時代において判定基準が設けられていたが、現在では、鉄道事業者によって、独自の判定基準を設けていることが多い。

参考として旧国鉄時代における判定基準は以下の通りである。

判定 判定内容・外観 亀裂の長さ 処置
1期 - きしみ割れがゲージコーナーのみに発生する。 0mmから21.6mm レール損傷台帳の記録に掲載する。
2期 A きしみ割れがゲージコーナーから頭頂両側に進む。1mのスパンで0.3mm以上の落ち込みがあることもある。 21.7mmから32.5mm レールに監視するマーキングをする。1mのスパンで0.5mm以上の落ち込みがあることもある。
3期 B 頭部両側に進行した亀裂がさらに進んで頭部幅の2/3に達する。 32.6mmから43.4mm 補強継目板を取付ける。レール交換の計画を立てる。
4期 C さらに進んだ亀裂が腹部までに達し横裂にいたる。 43.5mm以上 すみやかにレール交換を実施する。

きしみ割れの対策

きしみ割れは、レールに及ぼす影響が少ないため、現状では的確な対策が取られていないのが現状です。しかし、レールの材質的な対策としては、レールの側摩耗の進行を早める軟質なレールや、塑性変形の生成しにくい金属組織を有する材料の採用などが考えれるが、価格面ばかりではなく、ほかの種類のレール損傷を引き起こしやすいといった別の問題も出てくる可能性があるので、適正な材料の開発にはいまだいたっていない。

したがって、抜本的な対策としては、ゲージコーナーの表面がはく離を生成する以前に、レール削正して削り取る方法が、現時点では有効と考えられています。

急曲線区間での外軌レールの摩耗防止のため、レール塗油器により、摩耗レールを抑制する方法は一般的ではあるが、きしみ割れの発生と進展は、レールと車輪との滑り接触条件とレールの摩耗速度と密接な関係にある。

レール塗油器を設置してレールの摩耗速度を抑制することは、レールに疲労を蓄積させることになってしまうため、これが原因となってきしみ割れを発生させ、その亀裂の成長を促進させる場合があるためレール塗油をおこなうときには十分注意が必要である。