シェリング

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黒裂から転送)
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しぇりんぐ
shlley spot , black spot , shell , squat , shelling , dark spot
比較的曲線半径が大きい曲線外軌レールにおいて発生した頭頂面シェリング。ゲージコーナー部分においてはきしみ割れが発生している。

シェリングとは、レール損傷のうち、レール頭頂面に生じる黒点を伴う損傷のことである。別名、黒裂(こくれつ)とも呼ばれている。

シェリングの概要

シェリングは、頭頂面の車輪接触部分であるてり面に形成されていて、微細な亀裂の周辺が少し落ち込み、黒色に変色している損傷のことである。

シェリングによってレールが横裂に破断したときの破断面の疲労パターンが、貝殻状(シェル、shell)の模様のように見えることから頭頂面シェリングとも呼ばれている。別名を転がり接触疲労損傷とか黒裂ともいわれている。また、イギリスでは、熊がしりもちをついて出来るような窪みに見えることからスクゥオットと呼ばれている。

シェリングの特徴

シェリングの特徴として、レールと車輪との転がり接触疲労損傷によって頭頂面に亀裂核が形成され、そして、列車の車輪通過回数の増加によって拾う亀裂が進展していって、頭頂面に落ち込みが見受けられるようになり、水平裂や横裂に発展していくので注意が必要である。

シェリングの歴史

シェリングの始まりは、鉄道誕生と共に発生していたと考えられるが、現在のおいても発生メカニズムについてはいまだに解明されていない点が多く残されている。

日本においては、昭和29年ごろから、高速の大型蒸気機関車の運行に伴い、このシェリングが発生したが、蒸気機関車の散水停止や鉄道の電化に伴ってこのシェリングはいったん消滅した。

しかし、新幹線の運行開始とともに、これに類似したレール頭頂面の損傷が出始めた。そして、在来線においても列車が高速運転されるにしたがって、その高速線区において頻繁に発生するようになった。これは、在来線区でも列車の速度が早くなったことによるものである。

シェリングの進行

保線の作業や検査などにおいてシェリングを発見したときにはすでに、レール頭頂面に落ち込みをともなう黒斑が形成されていることが多い。このような状態のシェリングをレールの長手方向に切断して亀裂を観察すると、

  1. 亀裂起点から転がり接触面に水平に亀裂が進展する。(水平裂)
  2. 水平裂のある部分からレールの底部へ向かう横方向の亀裂が枝分かれする。(横裂)
  3. 横裂は進展性が高く、見逃していると確実にレールが折損してしまう。

シェリングの発生の仕組みはまだ解明されていないのだが、発生時期については、たとえば新幹線の場合、累積の通過トン数が1.5億トン程度になると、その発生確率は急増することが分かっている。在来線の場合は、追跡通過トン数が3.0億トン程度になると発生する。どちらかというと列車高速区間に多く発生するが、JR在来線の山手線のように比較的低速で走行する線区においても高密度列車線区においても多発することが多い。

レールの種類では、普通レール熱処理レールトングレールマンガンクロッシングなど、どのレールでもシェリングは発生する。

シェリングの防止

シェリングを防止する対策は、発生形態が未解明な部分もあり、いまだ確立されていないのが現状である。しかし、最近の研究により、シェリングを抑制する対策としてレール削正車レール削正を施すことが効果的であるということが明らかになった。このことを予防削正と呼んでいる。

また、レールの素材を改良したベイナイトレールを使用したシェリング防止法方も研究されてある。

シェリングの判定基準

頭頂面傷のひとつであるシェリングの判定は、旧国鉄時代において判定基準が設けられていたが、現在では、鉄道事業者によって、独自の判定基準を設けていることが多い。

参考として旧国鉄時代における判定基準は以下の通りである。

判定 判定内容 外観(目視) 処置
A1 厚さ計を用いて起点から列車進行方向に20mm未満の水平裂が検知される場合。 頭頂面にシェリング傷が認められ、レールの照り面、照り幅が変わってくる。また、落ち込みも出てくる。 監視マークをつける。
A2 厚さ計を用いて20mm以上の水平裂が検知される場合。または、斜角70度で深さ15mm以上の横裂が検知される場合。 シェリング傷が大きくなり、軌間外側かゲージコーナーに頭部水平裂が見られることもある。また、黒斑を伴うことがあり、その部分がはく離することもある。 監視マークをつける。
B 厚さ計を用いて50mm以上の頭部水平裂が検知される場合。または、斜角70度で深さ15mm以上の横裂が検知される。 シェリング傷がさらに大きくなり軌間外側かゲージコーナーに横裂が見られることがある。 補強継目板を取付ける。
C 厚さ計を用いて100mm以上の水平裂が検知される場合。または、斜角70度で深さ30mm以上の横裂が検知される場合。 頭部より横裂が発生して、レール損傷となる。 補強継目板を取付け、計画定期にレール交換を実施する。