エンクローズアーク溶接損傷

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えんくろーずあーくようせつせっそん
enclosed arc welding wound
エンクローズアーク溶接に発生した横裂
溶接熱影響層の高温液化割れ。ほとんどが母材レールの溶融境界層における高温液化割れを起点とする疲労破断であるが、これは従来の溶接棒では原理的に防止することができない。
足部の多層溶接におけるスラグはつり、レール腹部から頭部にかけてのエンクローズ部連続溶接の技能が十分良好でないとスラグ巻込みが発生する。

エンクローズアーク溶接損傷とは、レール溶接折損のひとつで、エンクローズアーク溶接のところで局部的な摩耗によりレール頭頂面やレール底部から疲労損傷により横裂が発生することである。

エンクローズアーク溶接損傷の特徴

エンクローズアーク溶接損傷の特徴として、溶接作業者の技能に左右されることが多く、溶接が良くないと底部に溶接欠陥が多発する。また、レールの頭頂面より早期の疲労損傷が発生する。

熱処理レールなどの高強度レールの場合には、普通レールより損傷が増長することがおおいので注意が必要である。

エンクローズアーク溶接損傷の発生原因と発生要因

溶接棒の特性に基づく不可避的溶接欠陥から、疲労損傷および溶接継手のレール頭部からの局部摩耗がある。

  • 従来の低合金高張力鋼用の溶接棒による溶接金属は、ベイナイト組織のため、母材レールのパーライト組織に比べると、硬さが同等でも耐摩耗性が著しく低下して局部摩耗の原因となる。
  • 溶接熱影響層(HAZ)の高温液化割れ(HAZ割れ)が発生する。これは、従来の溶接継手の損傷は、ほとんど母材レールの溶融境界層における高温液化割れを起点とする疲労破断である。しかも、HAZ割れは従来の溶接棒では原理的に防止することができない。

溶接作業者の技能不良に基づく溶接欠陥からの早期の破断がある。

  • レールの底部裏波溶接において、この部分の技能が良くないと、底部にアンダーカットまたは溶接金属にスラグ巻き込みが発生する。
  • スラグ巻き込みが発生する。これは、足部の多層溶接におけるスラグが張り付く。また、ウェブから頭部にかけてのエンクローズ部の連続溶接の技能が十分良好でないスラグ巻き込みが発生する。

エンクローズアーク溶接損傷の防止

レール鋼は炭素の量が非常に高く、また形状が複雑なため、レールのエンクローズ溶接作業は決して簡単な溶接作業ではない。したがって余熱・溶接電流・運棒法などの溶接条件および後熱処理法は、きわめて厳しく管理することにより防ぐことができる。

エンクローズアーク溶接の継手性能は、溶接棒の銘柄と溶接作業者の技能に依存するので、これらの選定は厳密に検討することが大切である。特に熱処理レールなどの高強度レールの継手では、この影響が極めて大きくなりますので、レールメーカーまたは溶接棒のメーカーに確認することが大切である。